~モデリング編1(床・天井)~
それでは前回までで出した数値を参考に、実際にモデルを作っていきます。
建物を作るときは全体のボリュームが確認できそうな部分から
バランスを確認しつつ作っていきます。
たとえば外観の建物なら外壁+屋根から、
内観は床面積と天井高のバランスで
空間の印象が全く違ってくるので今回は床から作ります。
数値ですが、測定時点では細かく出しておいて
実際モデリングはする時は入力や計算が大変になるので
シミュレーション等の特殊用途以外は簡略化しておきましょう。
(実寸をMMD用に倍率計算をした後、1の位は四捨五入する等)
算出した数値は事前に表にしたり、
写真に書き込んだ手元資料を作っておくと便利です。
今回は規模もそんなに大きくないので実寸で作りますが
城や広範囲マップは規模に応じて1/2スケールで作る等、
尺を小さく作って最後に倍率をもどす方法をオススメします。
ではメタセコを立ち上げます。
ここからは出来るだけ初心者向きに説明しますので
メタセコに慣れている方は飛ばし読みして下さいね。
※初心者向きですが先にイノシシは修了しておいて下さいw
パネルの配置等は済んでいる事を前提にしています
画面の背景色を標準に戻すのを忘れてスクリーンショットを撮ってしまいました。
見辛くてすみませんm(__)m
メタセコはシェア版を使用しています。
一部フリー版だと無い機能があると思いますがご了承ください。
まず最初にボリューム確認用モデルを作ります
モデリングしやすいように半透明のマテリアルを作っておきましょう。
材質パネルの新規で新しい材質を作り、不透明度を適度に下げます。
MMDでは全体的に暗く表示されるので自己照明は0.3ぐらいまで上げておきます。
(自己照明はテクスチャを貼る場合でも少し上げておいた方が良いです)
ではコピー元となる1ブロック分を大まかに作っていきましょう。
半角文字入力モード「P」で基本図形コマンドが出てきます
面を選択→詳細設定→横=540 縦=750→作成
同じ手順で両端部分の床面を横=100 縦=750で作ります
サイドの床面が選択されているままの状態で、移動コマンド「V」X=320
もう一度横=100 縦=750の面を作り今度は移動「V」X=-320
これで床面のモデルが出来ました。
この時、右ボタンを押したままマウスを動かすとカメラが動きます。
床の裏側を見てもらえれば分かりますが
(分かりにい人は一時的に材質の透過率を下げて下さい)
面の場合、片面状態では裏側から見ると面が無いように見えます。
この面の見え方は材質設定関係なくMMD上でも反映されます。
たとえば、床や天井を片面で作っておくとカメラが突き抜けていても
裏側になっている面は無いものとして表示されます。
俯瞰、ローアングルを多用する予定の作品の背景は床や天井を
片面で作っておくとカメラが付けやすいかもしれません。
「F5」でカメラを元に戻します。
次に天井です。
床のオブジェクトは名前を変えてロックを掛けておきましょう。
オブジェクトパネルで新規オブジェクトを作ります。
ショートカットを使うので文字入力後は半角に戻して下さい
基本図形「P」→面を選択→詳細設定→横=130 縦=750→作成
移動「V」→X=295 Y=900
選択部処理→面を反転
天井の曲面になっている部分ですが横幅に対して高さがあまり無いので、
今回は等分割を綺麗に出すために面を曲げて作ります。
円柱は円周の距離で等分割されている為、
一方向のみ変形させると等分割にならない為です。
最初の基本図形の選択でモデリングの効率がかなり変わってくるので
基本図形選択は慎重に考えましょう。
基本図形「P」→面を選択→詳細設定→横=230 縦=750 横方向8分割→作成
移動「V」→X=115 Y=820
選択部処理→面を反転
「F3」で正面ビュー→曲げコマンドを選択
曲げる時の基点になる始点と終点をクリックして
変形のガイドラインを引いてから画面内でドラッグして変形させます
拡大「Q」スクリーン変形
範囲選択「R」→ドラッグして範囲枠を指定し上部頂点選択
選択部処理→頂点の位置を揃える Y=900
範囲選択「R」→曲面と平面が重なっている部分の頂点選択
選択部処理→頂点の位置を揃える X=230
オブジェクトパネルの天井をダブルクリック→分離したミラーをX軸のみで設定してOK
オブジェクトメニュー→曲面・ミラーをフリーズ→ミラーをフリーズさせる
範囲選択「R」→X軸の中心の頂点を選択
選択部処理→頂点の位置を揃える X=0
F3の正面ビューで床と天井が画面中央に見えるように調整してからOrthoをクリック
Persビューになるので参考写真と見比べながら、空間の見え方を一度確認しましょう。
補足
※Ortho=垂直投影の事です。平行投影の内、斜投影以外の部分を指します。
衛星写真等で「オルソ補正」という用語がよく使われますね。
Pers=透視投影の事です。
立体図法の体系図を参考までに…
間違いやすい例としてはアクソノメとアイソメを逆に覚えている人が多いですね。
アイソメはアクソノメの内の一種でXYZ軸が120度で交差する図のことです
~立体図法編その2~
水平方向の測定をします
今回のロケ写真は1点透視になっています。
つまり奥行き方向だけの軸が歪んでいて、
水平方向の軸は平行を保って見えている事になります。
歪んでいないという事は、同じ位置にある
高さ方向の軸の距離をそのまま利用できます。
高さ軸と同じ比率計算で水平軸の距離も出せますね。
次に奥行き方向です。
良く観察すると今回の床の大きな円の模様は
大体柱芯が中心に通っていると分かります。
正方形・長方形の対角線の交点は中心になるはずなので
小さな円が丁度半分の位置にあると分かります。
次に床の柄の参考にする為に追加で撮影した写真を見ます。
円の直径は全体の写真から水平距離の比率で出せますね。
直径の距離はどの角度でも同じなはずですから比率計算で
柱芯⇔小さい円の中心の距離が出せます。
小さい円は丁度半分の位置にあるので
柱芯⇔小さい円の中心の距離×2で1ブロックの奥行き寸法になります。
以上で3軸全部のボリュームの数値が出せますね。
今回写真2枚だけでこれだけの測定が出来ました。
図形の知識を活用して形状観察する練習を普段からしておくと
モデリングの効率が上がりますよ。
~補足~
今回の立体図法の理論の測定以外の使い方として
今度は添景を正確なスケールで合成してみましょう。
分かりやすいように2点透視の簡単な建物外観の線画を作ってみました。
これも視点の高さ1500mmで作っています
1F事務所・2~3は居住フロアのよくあるS造3階建てのイメージですw
この場合、画面上に消失点は見えていませんが、
消失点は水平線上にあるはずなので、
玄関がある正面の面の水平方向の軸は水平線より上の位置は右下がり、
下の位置は右上がりになるはずですね。
側面の奥行き方向の軸は逆に水平線より上は左下がり、
下の位置は左上がりになるはずです。
この事から水平線の大体の位置が割り出せます。
高さ軸が歪んでいない見え方の場合、GL⇔水平線距離≒視点の高さなので、
およそ10000mm(10m)の建物だとわかりますね。
ここに人物を合成してみましょう。
この図は水平線が1500mmの高さなので、およそ目の高さになるようにしつつ
子供は背が低いはずなので身長差を考慮して合成します。
次に3000mm(3m)の街路樹を入れてみましょう。
GL⇔水平線×2の距離が3mになるはずですね。
水平線位置の高さを考慮すれば、補助線をほとんど引かなくても
正しいスケールの添景合成ができます。
余談ですが、さらにもう少し上級の立体図法の紹介をすると
中心の縦軸と水平線の交点から対角に引いた線を延長させ、
最高高さから水平に引いた線との交点から垂直に線を引いて
GLから水平に引いた線を結ぶと、概算ですが正面壁の立面が割り出せます。
建築透視図は図学として確立されていて国家資格(技能士)もあります。
興味がある方は書店で建築系に分類されている
パースの本を是非読んでみて下さい(^o^)
パズル感覚で面白いですよ~。
モデリング編1(柱・天井)へ
~立体図法編その1~
まずは写真から寸法を出す為に立体図法の基本を少し解説します。
本来同軸上にある平行線は交わらない筈なのですが
人間の目やカメラレンズは焦点に向かって歪んで見えます。
それを擬似的に平面に投影して
立体的に見せる図法が「パース」と呼ばれる物です。
現実世界は3次元ですから軸は3軸しかありません
という事は、視線の角度によって1~3点透視のどれかに
あてはまる見え方になっているはずです
1・2点透視の見え方になっている場合、
残りの軸は歪みがでていない軸という事です。
測定はこの平行になっている軸を利用します。
あとは基本中の基本の理論
1点・2点透視の場合、消失点は必ず水平線上にある
…という法則を覚えておけば、ある程度のスケールを測る事ができます
分かりやすいようにロケ写真を見ながら実際に測っていきます。
ロケ写真の撮り方ですが、
事前に自分がカメラを構えた際の大体の高さを把握しておきましょう
そして測定しやすいように高さ方向の軸が垂直になるように撮影します。
高さ方向が垂直になっていて水平線上に消失点がありますね。
この場合、横から見ると下図のような状態になっています。
高さ方向が垂直=視点と注視点の高さが同じ
そして地盤もしくは床に勾配がついていない場所なら
水平線との距離も同じということです
改めてロケ写真を見てみましょう
今回およそ1500mmの高さで写真を撮影しているので
赤線(水平線)から床の距離が約1500mmという事です。
さらに奥の歩行者の頭部の高さが水平線上に揃っている事から
床のレベルがほぼフラットだという事も分かります。
ここまで分かると全ての高さ軸は測定できるはずです。
目分量でも良いですが、写真データがあるなら
画像編集ソフトの定規ツールで画像の距離を測って比率計算していきましょう。
例えば、緑で柱の高さ、水色で天井高が出せます。
1500:a=χ:b となります。つまり1500×b÷a=χですね
中学レベルの数学が出来れば大丈夫なはず(^_^;)
あと良く観察すれば分かりますが今回のモデルは
黄色のブロックの繰り返しになっていますので
その部分だけ作りこめばあとはコピーできると分かります
その他、知りたい最低限ポイントの高さを出しておきましょう。
建物は大枠の寸法さえキッチリ押さえておけば、
若干細部の寸法が違っていても大体同じような印象になります(^_^;)
それだけにボリュームの掴みが大事だという事です
MMD40cm=メタセコ50なので
導き出したcm換算の実寸×1.25で数値モデリングすれば
同じスケールの建物がMMD内で再現できます。
ちなみにこの比率は標準モデルのミクの大きさと
公式のミクのプロフィールの身長比率から出された物で
MMDver3頃に出た数値だったと記憶しています。
公式モデルに合わせてキャラモデルを作れば
家具等の寸法計算されたアクセサリをそのままの大きさで使える
という利点もある訳ですね。
選考公開したステージの作り方です。
資料を全部作り終えるまで時間がかかるかもしれませんが
順次公開していく予定です。
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~はじめに~
キャラクターや小物アクセサリを作る方は増えましたが
背景モデラーさんはまだまだ少ない気がします。
建築物は単純な形状の組み合わせになるので
キャラクターよりもモデリング作業としては
簡単で初心者向けな題材です。
ただ、慣れていない人にとっては正確な形が取りづらく、
苦手意識を持ちやすい題材でもあります。
見た目の雰囲気だけでモデリングを始めてしまうと
後々に整合性が取れなくなり、行き詰って中断
…という経験がある方も多いのではないでしょうか?
理想はフリーのCAD等を利用して事前に2D図面を作る
もしくは工業系の仕事をされている方なら
アタリ用として3DCADでモデルを作ってしまう事ですが
(寸法の正確性にこだわるならフリー版SketchUpで制作→コンバートという手もあります)
CADなんて使えないよ!という方の為に
今回は立体図法を利用して大まかな寸法を割り出し、
メタセコだけで再現モデリングをやってみようと思います。
いくつか再現モデリングをしていると
空間把握力がつくので架空の背景も作りやすくなります。
是非、背景モデリングに挑戦してみて下さい。
注意点
※あくまでも一手法ですので慣れている方は
ご自身で効率の良い作り方を確立させていって下さいね。
※東京駅プロジェクトレベルの物を作るなら図面必須ですw
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今回の参考モデルの建物紹介
・ハービスENT http://www.herbis.jp/
JR桜橋口・地下鉄四つ橋線西梅田駅から近い場所にある商業施設です。
劇団四季の劇場やBillboard LIVE(元ブルーノート)があり、
世界的に有名なジャズミュージシャンの公演も良く行われています。
今回モデルにする場所は西梅田駅からBillboard LIVEへ向かう地下通路です。
他の内装も凝っていて綺麗な建物ですので
是非大阪に来られた際は訪れてみて下さい(^o^)/